運動が苦手な人の減量の始め方
運動の有無を二択にせず、生活内の動きを少し増やすところから始める。 無理をしない体づくり研究所が、生活に合わせた考え方と最初の一歩を解説します。
運動が苦手でも、減量は始められる
減量というと、ジョギングや筋力トレーニングを始めなければならないと考えがちです。しかし、運動が得意でない人が、最初からきつい運動を生活に追加する必要はありません。
体重管理には食事、日常活動、睡眠、生活リズムなど複数の要素が関係します。運動はその一つであり、「毎日しっかり運動する」か「まったく動かない」かの二択ではありません。
まずは座っている時間の一部を立つ時間に変える、少し歩く、家事をするなど、普段の生活の中にある動きを増やすところから考えてみましょう。運動への苦手意識が強い人ほど、頑張った一日の運動量よりも、無理なく繰り返せる行動を見つけることが大切です。
「運動しないと痩せない」と考えすぎない
体重は長期的には、食事から得るエネルギーと身体が使うエネルギーの関係などによって変化します。ただし、実際の体重には水分量や排便、食事内容なども影響するため、一日の運動量と翌日の体重が単純に対応するわけではありません。
そのため、「今日は運動したから体重が減るはず」「運動できなかったから太る」と一日単位で評価すると、必要以上に一喜一憂しやすくなります。
また、運動で消費した分を正確に計算し、その分だけ食事を減らそうとする必要もありません。消費エネルギーの推定値には誤差がありますし、運動後の空腹感が強くなる人もいます。
運動は体重を動かすためだけの手段ではありません。体力を保つ、筋肉や骨に刺激を与える、気分転換になるなど、さまざまな意味があります。減量だけを目的にして嫌いな運動を無理に続けるより、「少し動きやすい生活を作る」という考え方のほうが取り組みやすいでしょう。
最初は「運動」ではなく「生活の動き」を増やす
運動が苦手な人にとって、「週に何回トレーニングするか」を決めること自体が負担になる場合があります。その場合は、日常生活の中で動く機会を増やせないか探してみます。
たとえば、次のような行動があります。
- エレベーターではなく階段を一部だけ使う
- 近い場所への移動を徒歩にする
- 買い物のときに少し店内を歩く
- テレビや動画を見続ける途中で一度立つ
- 歯磨きや電子レンジの待ち時間に立って過ごす
- 掃除や片付けを短時間行う
- 駐車場で少し遠い場所に車を止める
すべてを実行する必要はありません。自分の生活で最も抵抗が少ないものを一つ選ぶだけでも十分です。
「階段を毎回使う」のが大変なら、「一日に一度だけ階段を使う」でも構いません。「30分歩く」が面倒なら、数分だけ外を歩くところから始められます。
最初から効果の大きそうな行動を探すより、翌日もできそうな行動を選ぶことが、習慣化には重要です。
座る時間を少し区切ってみる
デスクワークや動画視聴などで長時間座る生活では、「運動時間を確保する」以外にも、座り続ける時間を区切る方法があります。
たとえば、仕事の区切りで飲み物を取りに行く、休憩時間に少し歩く、電話中に立つなどです。数分の行動であれば、着替えや準備も必要ありません。
この方法の利点は、運動への心理的な負担が比較的小さいことです。
「今日は運動する日」と予定を組むと、仕事が忙しくなっただけで中止になることがあります。一方、日常の行動に組み込めば、新しく大きな時間を確保しなくても続けやすくなります。
ただし、立ち続けることや歩き続けることが誰にとっても適しているわけではありません。痛みや体調不良がある場合には無理をせず、必要に応じて医療専門職へ相談してください。
歩くなら、距離より「始めやすさ」を優先する
ウォーキングは特別な道具を必要としにくいため、運動が苦手な人でも取り入れやすい方法の一つです。しかし、「毎日何十分歩かなければ意味がない」と考えると、一気に難しくなります。
最初は、近所を少し歩く、コンビニまで歩く、昼休みに建物の周囲を回る程度でも構いません。
慣れてきたら、
「もう少し歩いても負担ではない」
と思える日に少し延ばします。
毎回距離を伸ばす必要はありません。忙しい日は短くし、余裕のある日は少し長くするという調整もできます。
歩数計やスマートフォンの記録が励みになる人は利用してもよいでしょう。ただし、数字を達成できないことがストレスになるなら、記録しなくても問題ありません。歩数は行動を確認する一つの方法であり、健康状態を決める点数ではありません。
運動するなら「物足りない」くらいから始める
生活内の動きに慣れ、もう少し運動したいと思ったら、軽い運動を追加する方法があります。
たとえば、短時間のウォーキング、自宅での軽い筋力トレーニング、体操などです。
この段階でも、最初から限界まで頑張る必要はありません。翌日に強い疲労が残り、「もうやりたくない」と感じるほど追い込むより、少し余裕を残して終えるほうが次回につながりやすくなります。
運動習慣がほとんどなかった人では、少ない運動でも身体にとっては新しい負荷です。回数や時間を増やす場合も、一度に多く変えるより、様子を見ながら段階的に調整します。
運動中に強い痛み、胸部の不快感、強い息苦しさ、めまいなど通常とは異なる症状が出た場合は、無理に続けないことが大切です。
食事を極端に減らして帳尻を合わせない
「運動が苦手だから、その分食べなければよい」と考えることにも注意が必要です。
食事量を極端に減らしたり、主食を完全に抜いたり、長時間食べない方法を続けたりすると、強い空腹や疲労につながることがあります。結果として食事管理自体を続けにくくなる場合もあります。
まずは食事全体を眺め、
- 甘い飲み物やアルコールが習慣になっていないか
- 空腹でないのに間食する場面が多くないか
- 野菜やたんぱく質を含む食品が極端に少なくないか
- 食事を抜いた反動で夜に強く空腹になっていないか
といった点を確認します。
食事と活動量を同時に大きく変える必要もありません。最初の一週間は飲み物だけ見直し、次に歩く時間を少し増やすなど、一つずつ変更したほうが「何が続けやすかったか」を判断しやすくなります。
「できなかった日」を失敗にしない
運動習慣が途切れる原因の一つは、一度予定どおりできなかったことを大きな失敗として扱ってしまうことです。
残業した、雨が降った、疲れていた、旅行に出た、体調が悪かったなど、予定どおり動けない日は誰にでもあります。
その日に無理やり取り返す必要はありません。
30分歩く予定だったのにできなかったから翌日に60分歩く、食べすぎたから食事を抜く、といった帳尻合わせは負担を大きくしやすくなります。
次の日に普段の生活へ戻れば十分です。
「毎日続ける」ではなく、
「途切れても再開できる」
ことを目標にすると、長期的には扱いやすくなります。
続かないときは意志ではなく仕組みを変える
何度挑戦しても運動が続かない場合、「自分は意志が弱い」と結論づける必要はありません。行動の難易度が今の生活に合っていない可能性があります。
たとえば朝のウォーキングが続かないなら、朝が苦手なのかもしれません。帰宅後の筋トレができないなら、仕事後にはすでに疲れているのかもしれません。
その場合は行動を小さくします。
「帰宅後に30分歩く」を「夕食後に家の周囲を少し歩く」に変える。「筋トレを一式行う」を「一種目だけ行う」に変える。それでも難しければ、運動ではなく買い物や掃除などの生活活動を増やす方法へ戻しても構いません。
減量方法は、難しいことに耐えられるかを競うものではありません。自分の生活の中で繰り返せる形を探すことが重要です。
体重以外の変化も確認する
減量を始めると体重だけに注目しがちですが、活動量を増やした成果は体重計だけでは判断できません。
以前より歩くことが苦にならなくなった、階段で息切れしにくくなった、外出する機会が増えた、運動後の疲れ方が軽くなった、といった変化も確認できます。
体重は水分量や食事内容などによって短期間で変動します。そのため、一日の数字だけを見て活動内容を大幅に変える必要はありません。
体重を記録する場合も、一回ごとの増減より、ある程度長い期間の傾向として見るほうが落ち着いて判断しやすくなります。
まず一つだけ変える
運動が苦手な人が減量を始めるとき、最初から「食事改善、毎日ウォーキング、筋トレ、早寝」をすべて始める必要はありません。
たとえば最初の行動を、
「昼休みに少し歩く」
だけにしても構いません。
それが生活の一部になったら、次の小さな行動を考えます。余裕がなければ、そのままでもよいでしょう。
大切なのは、運動できる人の生活をそのまま真似することではありません。現在の生活より少し動く機会を増やし、それを無理なく繰り返せる形にすることです。
妊娠中の人、持病がある人、服薬中の人、過去または現在に摂食障害がある人では、一般的な減量方法が適さない場合があります。また、体調や身体機能によって適切な運動量は異なります。体重を減らすこと自体が適切かどうかも含め、必要に応じて医師や管理栄養士などの専門職に相談してください。
運動を好きになることを目標にする必要はありません。「少しならできる行動」を生活の中に残していくことから、無理のない体づくりは始められます。