脂質を怖がりすぎない食事管理
脂質の役割を踏まえ、全カットではなく食品や調理法を選ぶ。 無理をしない体づくり研究所が、生活に合わせた考え方と最初の一歩を解説します。
脂質は「減らすほどよい」栄養素ではない
脂質は、炭水化物やたんぱく質と並ぶ主要なエネルギー源の一つです。体内ではエネルギーとして利用されるだけでなく、細胞膜の材料になったり、脂溶性ビタミンの吸収を助けたりするなど、さまざまな役割を担っています。
そのため、体重管理を目的としていても「脂質は太るから、できるだけ食べない」と考える必要はありません。大切なのは、脂質そのものを敵にすることではなく、どの食品から、どのくらいの頻度で取り、食事全体をどう組み立てるかを見ることです。
脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを持ちます。炭水化物とたんぱく質はそれぞれ1gあたり4kcalなので、同じ重量では脂質のほうがエネルギー量は多くなります。この性質から、油を多く使った料理や脂質の多い食品が重なると、食事全体のエネルギー量が増えやすいのは確かです。
ただし、この特徴だけを見て脂質を極端に減らすのは適切ではありません。食事は一つの栄養素だけで決まるものではなく、食品の種類、量、調理法、食事の頻度、活動量、睡眠など多くの要素が関係します。
脂質は食品の中に含まれている
脂質というと、サラダ油やバターなどの「目に見える油」を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、肉、魚、卵、乳製品、ナッツ類、菓子、パン、加工食品など、さまざまな食品に含まれています。
そのため、油を使わない料理ばかりにしても、食事全体の脂質が必ず少なくなるとは限りません。逆に、調理油を適度に使っていても、その他の食品との組み合わせによっては無理のない食事にできます。
体重管理では、「油を使ったかどうか」だけではなく、食事全体を見ることが重要です。
たとえば、揚げ物を食べたからといって、その日の脂質を帳消しにするために次の食事を抜く必要はありません。次の食事で普段の食事に戻し、主食、野菜、魚や肉などを無理なく組み合わせるほうが、極端な調整を繰り返しにくくなります。
脂質には種類がある
食品に含まれる脂肪酸にはいくつかの種類があり、健康への影響もすべて同じではありません。
一般に、魚、ナッツ類、種子類、植物油などには不飽和脂肪酸が多く含まれます。一方、脂身の多い肉、バター、生クリームなどには飽和脂肪酸が比較的多く含まれます。
この違いはありますが、「植物性なら無制限に食べてよい」「動物性脂肪は食べてはいけない」という意味ではありません。どちらも量や食事全体との組み合わせが重要です。
また、食品には脂質以外の栄養素も含まれています。たとえば魚は脂質だけでなく、たんぱく質なども含む食品です。ナッツ類にも脂質だけでなく、食物繊維やさまざまな栄養素が含まれています。
栄養素を一つずつ切り離して善悪を決めるより、「普段どのような食品を選んでいるか」という視点のほうが、日常の食事には取り入れやすいでしょう。
日常では「全カット」より選び方を調整する
脂質を減らしたいと感じたとき、最初から油を完全に使わない食生活に変える必要はありません。まずは、脂質が重なっている場面を探す方法があります。
たとえば、揚げ物にマヨネーズをたっぷり添え、さらにクリーム系のデザートを食べるといった組み合わせでは、複数の料理から脂質を取ることになります。
この場合も、すべてを禁止する必要はありません。揚げ物を食べる日は副菜をあっさりしたものにする、ドレッシングやソースを必要以上に追加しない、別の日には焼く・蒸す・煮る料理を選ぶ、といった調整が考えられます。
調理法を使い分ける
同じ食材でも、揚げる、炒める、焼く、蒸す、煮るなど、調理法によって追加される油の量は変わります。
揚げ物が好きなら、完全にやめるのではなく頻度を調整する方法があります。普段は焼き物や煮物も取り入れ、食べたいときには揚げ物を楽しむという形でもかまいません。
「一生続けられるか」という視点で考えると、好きな料理を全面的に禁止するより、いくつかの調理法を使い分けるほうが実行しやすい場合があります。
加工食品は栄養表示も参考にする
菓子、菓子パン、インスタント食品、惣菜などでは、見た目だけでは脂質量が分かりにくい場合があります。
包装された食品では栄養成分表示を確認できます。ただし、数字を見る目的は「脂質の多い食品を禁止すること」ではありません。
似た商品で迷ったときの比較材料にしたり、「この食品には思ったより脂質が含まれている」と気づいたりするための情報として使うとよいでしょう。
一つの数字だけで食品の良し悪しを決めず、たんぱく質、食物繊維、塩分、量、食べる頻度なども含めて考えることが大切です。
主食まで一緒に減らさない
脂質の多い食事を避けようとして、主食まで大幅に減らしてしまうことがあります。しかし、脂質を調整することと、炭水化物を極端に制限することは別の話です。
ご飯、パン、麺などの主食は、食事のエネルギー源になります。脂質も炭水化物も同時に大きく減らしてしまうと、食事量そのものが少なくなり、強い空腹につながる場合があります。
その結果、後の食事や間食で食欲が強くなることも考えられます。
体重管理では、特定の栄養素を次々と削るのではなく、「今の食事で無理なく変えられる部分はどこか」を考えるほうが現実的です。
脂質だけで体重変化を説明しない
体重が増えた日に、「昨日、脂っこいものを食べたから脂肪が増えた」と考えてしまうことがあります。しかし、短期間の体重変動には体内の水分量、塩分摂取、食べたものの重量、排便などさまざまな要因が関係します。
一日の体重変化だけから、どれだけ体脂肪が増減したかを正確に判断することはできません。
食生活を振り返る場合も、一度の揚げ物や外食だけを見るより、数日から長めの期間で繰り返されている習慣を見るほうが役立ちます。
体重そのものも健康状態を判断する一つの情報にすぎません。食事内容、活動量、睡眠、体調、血液検査など、必要に応じて複数の情報を合わせて考えることが大切です。
BMIについても同様で、身長と体重から計算できる便利な指標ではありますが、筋肉量や脂肪の分布、個人の健康状態を直接示すものではありません。BMIだけを理由に食事を極端に変える必要はありません。
「低脂質」という表示だけで選ばない
低脂質の食品が役立つ場面はありますが、「低脂質だから健康的」「脂質が多いから不健康」と単純には判断できません。
脂質を減らした食品でも、ほかの成分や食品全体の特徴によって栄養構成は異なります。また、低脂質食品ばかりを選ばなくても、通常の食品を適量食べることで食事を組み立てることは可能です。
反対に、オリーブ油、魚、ナッツなど健康的なイメージのある食品も、量を気にしなくてよいわけではありません。
健康によいとされる食品を大量に追加するのではなく、普段の食事の一部として無理なく取り入れる考え方が基本です。
脂質を減らしすぎることにも注意する
脂質の摂取を極端に少なくする食生活は勧められません。脂質には体内で必要な役割があり、脂溶性ビタミンの吸収にも関わります。
また、極端な食事制限は、外食や家族との食事が難しくなったり、食べた後の罪悪感を強めたりすることがあります。
「油を使った料理を食べたら失敗」「脂質を取った日は翌日絶食する」といった考え方になるのであれば、食事管理の方法そのものを見直したほうがよいでしょう。
食事は毎日続くものです。多少予定と違う食事になっても、次の食事から普段の食事へ戻せる仕組みのほうが長く続けやすくなります。
数字は目安として使う
脂質の適切な摂取量は、年齢、性別、活動量、総エネルギー摂取量、健康状態などによって異なります。そのため、誰にでも同じ量が適切とは限りません。
公的な食事摂取基準には脂質の目標量などが示されていますが、日常生活で毎食の脂質を厳密に計算し続けなければならないわけではありません。
栄養成分表示や食事記録は、自分の傾向を知る手段として利用できます。「揚げ物が連日続いている」「菓子や菓子パンから脂質を取ることが多い」といったパターンが分かれば、変えやすい部分から調整できます。
数字を守ること自体が目的になり、食べることへの不安が強くなる場合には、細かな記録から距離を置く選択もあります。
特別な健康状態では自己判断で大きく変えない
脂質の取り方について一般的な工夫はできますが、すべての人に同じ食事法が適しているわけではありません。
妊娠中や授乳中、成長期、高齢者、持病がある人、医薬品を使用している人などでは、必要な栄養量や注意点が異なる場合があります。血中脂質などの検査値について治療を受けている場合も、インターネット上の一般情報だけを理由に食事を大きく変更せず、医師や管理栄養士などに相談してください。
また、脂質やカロリーを強く恐れる、特定の食品を次々と禁止する、食べた後に絶食や過度な運動で帳尻を合わせようとするなど、食事への不安やこだわりが強くなっている場合には、単なる栄養管理の問題ではない可能性があります。摂食障害が疑われる場合を含め、自己判断で制限を強めず、専門家への相談を検討することが大切です。
脂質は「なくす」のではなく食事全体で考える
脂質はエネルギー量が高いため、体重管理では量や頻度を意識する価値があります。しかし、それは脂質をできるだけ排除することとは違います。
普段の食事では、揚げ物だけが続かないようにする、焼く・蒸す・煮る調理法も使う、魚やナッツ類などさまざまな食品を取り入れる、加工食品では必要に応じて栄養成分表示を見る、といった小さな工夫から始められます。
一度脂質の多い食事をしたからといって、次の食事を抜いたり、ほかの栄養素まで極端に減らしたりする必要はありません。
脂質を怖がるのではなく、食品、調理法、量、頻度、そして食事全体のバランスを見ることが、無理の少ない食事管理につながります。