脂質の役割と食品の選び方
不足と過剰のどちらにも偏らない食事を目指す。 無理をしない体づくり研究所が、生活に合わせた考え方と最初の一歩を解説します。
脂質は「減らすほどよい」栄養素ではない
脂質は、炭水化物やたんぱく質と並ぶ主要なエネルギー源です。体脂肪の増加を気にすると「脂質はできるだけ避けたほうがよい」と考えやすい一方、健康を保つために必要な役割もあります。
大切なのは、脂質を一律に悪者にすることではありません。どのような食品から、どのくらいの頻度で取っているかを含め、食事全体の中で考える必要があります。
脂質を極端に減らす食事も、脂質の多い食品に偏った食事も、長く続けやすいとは限りません。不足と過剰のどちらにも偏らず、主食、主菜、副菜などとの組み合わせを整えていくことが基本です。
脂質にはさまざまな役割がある
脂質は体内でエネルギー源として使われるほか、細胞膜など体を構成する材料にもなります。また、脂溶性ビタミンの吸収にも関わっています。
脂質を含む食品は食事のおいしさや満足感にも関係します。油脂を完全に使わない食事を目指す必要はありません。
一方、脂質は少量でも比較的多くのエネルギーを含むため、調理油、揚げ物、菓子類などが重なると、本人が思っている以上に摂取量が増えることがあります。
そのため、「脂質を取るか取らないか」ではなく、「どこから脂質を取っているか」を確認するほうが実際の食生活では役立ちます。
脂質は種類によって特徴が異なる
食品に含まれる脂肪酸には複数の種類があります。大きく見ると、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸などに分けられます。
肉類の脂身、バターなどには飽和脂肪酸が比較的多く含まれます。一方、魚、ナッツ類、種実類、植物油などには不飽和脂肪酸を含むものがあります。ただし、実際の食品には一種類だけの脂肪酸が入っているわけではありません。複数の脂肪酸がさまざまな割合で含まれています。
そのため、「この食品の脂は良い」「こちらは悪い」と単純に区切るより、特定の食品ばかりに偏らないことが重要です。
例えば肉を食べてはいけないわけではありません。肉料理が多い人であれば、ときどき魚料理に替えたり、脂身の少ない部位を選んだりするだけでも、脂質の取り方に変化をつけられます。
食品全体を見て選ぶ
脂質を考えるときには、脂質だけを切り離して判断しないことも大切です。
例えば魚には脂質だけでなく、たんぱく質なども含まれています。ナッツ類には脂質とともに食物繊維や各種の微量栄養素が含まれています。一方、菓子類やスナック類も脂質を含みますが、砂糖や塩分などを多く含む商品もあります。
同じ「脂質10グラム」といった数字だけを見ても、食品としての特徴は同じではありません。
日常では、栄養成分表示の脂質量だけで食品の良し悪しを決めるのではなく、何を食べる食品なのか、ほかにどのような栄養素を含むのか、どのくらいの頻度で食べるのかまで考えると、より現実的です。
見落としやすい脂質を確認する
脂質を調整したい場合、最初から食事全体を大幅に変える必要はありません。まず、日常的に使っている油脂を確認してみる方法があります。
炒め物に使う油、ドレッシング、マヨネーズ、バター、クリーム類などは、料理の一部として使うため摂取量を意識しにくいことがあります。
また、揚げ物、菓子パン、洋菓子、スナック菓子なども脂質が多くなることがあります。ただし、これらを完全に禁止する必要はありません。
例えば、
- 揚げ物が続いたら次の食事は焼き物や煮物にする
- ドレッシングを最初から大量にかけず、必要な分だけ使う
- 毎日食べている菓子を、ときどき別の間食に替える
- 肉料理が続いたら魚や大豆製品を組み合わせる
といった小さな調整でも、食生活全体の偏りを減らすことができます。
調理法を変えるだけでも脂質量は変わる
同じ食材でも、調理方法によって食事に加わる脂質量は変わります。
揚げる、炒めるといった調理では油を使いますが、焼く、蒸す、煮るといった方法では油をあまり使わずに調理できる場合があります。
だからといって、揚げ物を食べてはいけないわけではありません。揚げ物を楽しむ日があっても、ほかの食事まで厳しく制限する必要はありません。
一食単位で完璧に整えようとせず、数日から普段の食生活全体を見て、同じ調理法が続きすぎていないかを確認するほうが続けやすくなります。
魚や植物性食品も選択肢にする
脂質の取り方を整えたい場合、肉類を減らすことだけを考えるのではなく、食品の種類を増やす方法があります。
魚、大豆製品、ナッツ類などを普段の食事に組み込めれば、たんぱく質源や脂質源の選択肢が広がります。
例えば主菜が肉料理に偏っている人なら、週のうち何回かを魚料理や豆腐料理に替える方法があります。完璧な献立を作る必要はありません。
缶詰の魚、冷凍魚、豆腐、納豆など、準備の負担が少ない食品を使う方法もあります。健康的とされる食品でも大量に食べればよいわけではなく、普段の食事の一部として取り入れることが基本です。
「低脂質」という表示だけで判断しない
脂質を控えたいとき、「脂質ゼロ」「低脂肪」といった表示の商品を選びたくなることがあります。しかし、その表示だけで食品全体の価値が決まるわけではありません。
脂質を減らした商品でも、糖類や塩分などほかの成分が多い場合があります。反対に、脂質が比較的多くても、魚やナッツ類のように食事の中で活用できる食品もあります。
食品を選ぶときは、一つの数字だけに注目するのではなく、原材料や栄養成分表示、食べる量、普段の食生活との組み合わせを確認するとよいでしょう。
減量中でも脂質を極端に避けない
体重を減らしたいときには、脂質の摂取量を見直すことが役立つ場合があります。ただし、脂質を限りなくゼロに近づける必要はありません。
減量では食事全体のエネルギー量や食習慣、活動量、睡眠など複数の要因が関係します。「油を食べなければ必ずやせる」といった単純な関係ではありません。
脂質を減らすことばかり優先すると、食事の満足感が下がり、反動で食べ過ぎる人もいます。逆に、糖質を極端に減らして脂質の多い食品を自由に食べればよい、とも限りません。
特定の栄養素を極端に制限するより、普段よく食べている食品を確認し、負担なく変えられる部分から調整することが現実的です。
サプリメントより日常の食品を基本にする
脂肪酸を含むサプリメントなども販売されていますが、健康な人が脂質を取るために必ず利用しなければならないものではありません。
まずは魚、肉、卵、大豆製品、植物油、ナッツ類など、普段の食品の組み合わせを考えることが基本です。
サプリメントは食品とは成分の構成や摂取量が異なります。服薬している場合には、成分によって薬との相互作用などを考慮する必要があることもあります。自己判断で大量に摂取することは避け、必要性について迷う場合は医師や薬剤師などに確認してください。
一食ではなく、普段の食生活で考える
脂質の取り方は、一回の食事だけで評価するものではありません。
焼肉を食べた日や揚げ物を楽しんだ日があっても、それだけで食生活全体が悪くなるわけではありません。翌日に食事を抜いたり、極端に脂質を制限したりして帳尻を合わせる必要もありません。
次の食事から普段の食事に戻し、野菜、主食、たんぱく質源などを組み合わせていけば十分です。
長期的には、
- 肉、魚、大豆製品などを偏らせない
- 揚げ物だけでなく焼く・蒸す・煮る料理も選ぶ
- 調理油やドレッシングを必要以上に使っていないか確認する
- 菓子やスナック類を禁止せず、頻度と量を見る
といった考え方が使えます。
個別の事情がある場合は調整が必要
脂質の適切な取り方は、年齢、活動量、食生活、健康状態などによって異なります。
脂質異常症などの持病がある人、治療中の人、薬を服用している人は、一般的な健康情報だけを基準に食事を大きく変更しないほうがよい場合があります。
妊娠中や授乳中も、必要な栄養が変化するため、極端な食事制限は避ける必要があります。また、食事や体重への不安が強く、食品を避ける範囲が増えている場合や、過食と厳しい制限を繰り返している場合には、栄養素の調整よりも専門家への相談を優先したほうがよいことがあります。
脂質は、避けるべきものでも、多く取るほどよいものでもありません。食品の種類、調理法、量、食べる頻度を食事全体の中で見ながら、無理なく続けられる範囲で整えていくことが基本です。