座りっぱなしを減らす工夫
長い運動一回だけでなく、仕事中の小さな中断をつくる。 無理をしない体づくり研究所が、生活に合わせた考え方と最初の一歩を解説します。
座りっぱなしは「運動不足」と少し分けて考える
デスクワークや勉強、テレビ、ゲーム、車での移動などが続くと、気づかないうちに長時間座りっぱなしになることがあります。そこで意識したいのが、「運動する時間をつくること」と「座り続ける時間を短くすること」は、少し別の課題だという点です。
たとえば、仕事の後にウォーキングをしていても、日中に何時間もほとんど立たずに過ごしている場合があります。反対に、本格的な運動をしていなくても、仕事や家事の途中でこまめに立ったり歩いたりすることはできます。
座りっぱなしを減らすために、いきなり長時間の運動を始める必要はありません。まずは「座っている時間の途中に、小さな中断をつくる」と考えると取り組みやすくなります。
大切なのは、一日の活動を完璧に管理することではなく、今より少し体を動かす機会を増やし、それを無理なく続けられる形にすることです。
まずは座っている場面を知る
座りっぱなしを減らそうと思っても、どこで長く座っているのか分からなければ工夫しにくいものです。最初から細かく記録する必要はありません。普段の一日を思い返してみましょう。
たとえば、
- パソコンを使っている仕事中
- 通勤の電車や車の中
- 昼休み
- 帰宅後にテレビや動画を見る時間
- ゲームや読書をしている時間
など、長く座りやすい場面はいくつかあります。
この中から、一番変えやすそうな場面を一つ選ぶだけでも十分です。
仕事中に自由に席を離れられない人もいます。その場合は、無理に頻繁な離席を目指す必要はありません。休憩時間、トイレ、コピー、飲み物を取りに行く時間など、もともとある行動を利用すると負担を増やしにくくなります。
「運動する」より先に「一度立つ」でもよい
座りっぱなし対策というと、スクワットやストレッチなどを毎回しなければならないと思うかもしれません。しかし、初心者の場合はもっと小さく始める方法があります。
たとえば、作業の区切りで椅子から立ち上がる、飲み物を取りに行く、少し歩くといった行動です。
最初の目標を「運動する」にすると、忙しい日は実行しにくくなります。一方、「一度立つ」であれば、仕事の合間にも取り入れやすくなります。
慣れてきたら、立ったついでに数歩歩く、軽く体を伸ばすなど、自然に活動を増やしていけばよいでしょう。
用事をあえて動く機会にする
日常には、わざわざ運動時間を確保しなくても体を動かせる場面があります。
たとえば、飲み物を手元に大量に置いておくのではなく必要なときに取りに行く、近い場所への移動では階段を選べそうなら使う、休憩中に少し歩く、といった工夫です。
ただし、効率を悪くしてまで歩く必要はありません。仕事の内容や職場のルールによってできることは異なります。
「動くための特別な行動」を追加するより、もともとの生活の中に小さな移動を残しておく、と考えると続けやすくなります。
仕事中は「区切り」と結びつける
座りっぱなしを減らすために、「一定時間ごとに必ず立つ」と決める方法もあります。しかし、時間ばかり気にすると仕事に集中しにくくなったり、予定どおりできなかった日に挫折感が出たりすることがあります。
そこで使いやすいのが、時間ではなく作業の区切りと結びつける方法です。
たとえば、
- 一つの資料を作り終えたら立つ
- オンライン会議が終わったら少し歩く
- 昼食後に少し歩く
- トイレに行った帰りに遠回りできそうなら少し歩く
- 電話をかけるとき、可能なら立つ
といった形です。
すでに繰り返している行動に結びつけると、「動くことを思い出す」という負担を減らせます。
職場によっては立って仕事をすることが難しかったり、決められた場所を離れられなかったりします。その場合は、勤務ルールを優先し、実行可能な範囲で工夫してください。
スタンディングデスクは必須ではない
座りっぱなし対策として、昇降式デスクやスタンディングデスクが紹介されることがあります。便利な選択肢ではありますが、購入しなければ対策できないわけではありません。
立ち続けること自体を目標にする必要もありません。長時間同じ姿勢を続けるより、座る、立つ、歩くといった状態を無理なく切り替えるほうが現実的です。
立っていると疲れる人は、無理に立位時間を増やす必要はありません。まずは座っている途中で立ち上がり、少し動いて、再び座るだけでも生活のリズムは変わります。
設備を整えることより、「自分の環境で繰り返せる行動」を見つけることを優先しましょう。
小さな運動を加えるなら、余裕のある強度から
座った状態を中断することに慣れてきたら、体調や環境に合わせて軽い運動を加える方法もあります。
たとえば、室内を歩く、肩や腕をゆっくり動かす、無理のない範囲で立ち座りを繰り返すなどです。
ここで大切なのは、回数を競わないことです。
座りっぱなしを減らすことが目的なのに、毎回きつい筋力トレーニングをすると、仕事の妨げになったり、疲れて続かなくなったりする可能性があります。
運動を追加する場合も、「終わったあとに普通の生活へ戻れる程度」から始めると調整しやすくなります。
息が大きく乱れる運動を仕事の合間に行う必要はありません。筋力や体力を高めたい場合は、座りっぱなし対策とは別に、時間を確保して運動する方法も考えられます。
負荷は一度に増やさず、一つずつ調整する
活動量を増やすときは、時間、回数、運動の強さを同時に増やさないほうが変化を把握しやすくなります。
たとえば最初は「午後に一度だけ席を立つ」だったものを、「午前と午後に一度ずつ」にする。その生活に慣れてから、少し歩く行動を追加する、といった進め方です。
毎日まったく同じようにできなくても問題ありません。忙しい日は立ち上がるだけ、余裕のある日は少し歩くというように、活動量には幅があってかまいません。
疲労が強く残る場合は、回数や運動量を減らす選択も必要です。「増やし続けること」だけが進歩ではありません。生活に定着する量を見つけることも重要です。
長い運動一回だけに頼らない
健康や体力づくりのために、ウォーキングや筋力トレーニングなど、まとまった運動時間をつくることには意味があります。ただし、それを理由に「今日は運動したから残りの時間はずっと座っていてよい」と考える必要もありません。
まとまった運動と、日常の小さな活動は両立できます。
朝に運動する人でも、仕事中には時々立つ。運動しない日でも、昼休みに少し歩く。このように考えれば、運動できる日とできない日の差も小さくできます。
「一日一回の運動ですべてを解決する」のではなく、一日の中に複数の小さな活動を散らすイメージを持つとよいでしょう。
休むことも活動量調整の一部
座りっぱなしを減らすことと、休息を減らすことは同じではありません。
疲れているときに座って休むことは自然な行動です。睡眠時間を削って歩いたり、体調が悪い日に無理に活動したりする必要はありません。
仕事で長時間立っている人や、普段から多く歩いている人では、むしろ座って休む時間が必要になる場合もあります。
そのため、「座ることは悪い」と単純化しないことが大切です。問題にしたいのは、生活全体の中で必要以上に長く同じ状態が続いていないかということです。
十分な睡眠、食事、休養と組み合わせながら活動を調整しましょう。
痛みや体調変化があるときは無理をしない
立ち上がったり歩いたりしたときに痛み、強い息苦しさ、めまいなどの体調変化がある場合、その原因を自己判断して運動で改善しようとするのは避けましょう。
この記事では、症状の原因やけが、疾患について診断することはできません。症状が続く、強い、不安があるといった場合は、必要に応じて医療機関などへ相談してください。
妊娠中の人、持病のある人、服薬中の人、過去のけがなどによって運動を制限されている人は、一般的な運動方法がそのまま適しているとは限りません。主治医などから活動について指示を受けている場合は、その内容を優先してください。
また、体重を減らす目的で座る時間を極端に減らしたり、疲労を無視して長時間活動したりする必要はありません。食事を極端に制限することと組み合わせて活動量を急激に増やす方法も避けましょう。
続けるためには「最低ライン」を低くする
座りっぱなし対策は、一日だけ大量に歩くより、日常に残る形をつくることが重要です。
そのためには、「これだけできれば今日は十分」という最低ラインを小さくしておく方法があります。
たとえば、「仕事中に一度は立って少し歩く」だけでも構いません。余裕があれば回数を増やし、忙しい日は最低ラインだけにします。
できなかった日に翌日倍にする必要もありません。次の機会から元の行動に戻せば十分です。
座りっぱなしを減らす工夫は、特別なトレーニングというより、生活の組み立て方を少し変える試みです。長い運動時間を確保できない人でも始められます。
まずは今日、普段なら座り続けている場面で一度立ってみる。そのくらい小さな変化から始め、無理なく繰り返せる形を探していきましょう。